コラム

意外と知られていない休職者の実際~メンタルヘルス不調で休職している人は、みんな復職していくのか?~

「うつ病で休職した人は、最終的にみんな復職するものだ」

 

このような認識をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

しかし、実際の状況は私たちが想像するものとは大きく異なります。

メンタルヘルス不調により休職している方々の多くが、実は復職以外の選択肢を検討し、転職や退職という道を歩んでいるのが現実です。

この記事では、意外と知られていない休職者の実態について詳しく解説します。

急増するメンタルヘルス不調による休職者

まず、現在の状況を数字で把握してみましょう。

厚生労働省の「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス不調による休職者数は年々増加の一途をたどっています。

過去1年間でメンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休職した労働者がいる事業所の割合は以下の通りです。

 

約10年間で、メンタルヘルス不調による休職者がいる事業所の割合は2倍以上に増加しています。

このデータは休職者数の全体像を直接示すものではありませんが、日本の労働環境においてメンタルヘルス課題が増加していることを如実に物語っています。

 

また、厚生労働省の患者調査によると、日本における精神疾患を有する総患者数は約603.0万人です(2023年時点)。

これは国民の約20人に1人が精神疾患を抱えている計算になります。

精神疾患の中でも、特に気分障害(うつ病など)、不安障害、統合失調症などの患者数が多いです。

外来患者では気分障害が最も多く、入院患者では統合失調症が最も多いという結果になります。

 

この様なデータを見ると、メンタルヘルス不調になった際に「どの様にしたら良いのか?」「休職した場合どうなるのか?」といった対策は知っておくと安心できるかと思います。

 

また、このデータは悲観的に捉えるというよりかは、同時に治療されて寛解されている方や休職しても復職している人も数多くいるということです。

それだけ、多くの事例やどうしたら良いのかという情報も集まってきているということです。

今回は、休職した方々が辿ったストーリーを紹介していこうと思います。

復職が当たり前ではない現実

多くの人が「休職したら復職」と捉えがちですが、実際の状況は異なります。

メンタルヘルス不調で休職した方々が辿る道筋は、実に多様になっています。

 

それと同時に、会社側でも休職された方の対応や規定、休職中や復職後のサポートなど整備が整ってきている状況でもあります。

休職率のデータからも分かるように、「休職する」は長く働く上での一つの選択肢として存在しつつあります。

そのため、大企業だけでなく、中小企業などでも休職者が増えてきており、休職者のサポートを経験している人事や所属長は増加傾向になっていることが予想されます。

 

休職期間中に心身の回復を図りながら、同時に自分の働き方や人生について深く考える機会を得る方が多くいらっしゃいます。

その結果として、「元の職場に戻ること」が必ずしも最良の選択肢ではないと判断される場合も少なくありません。

実際にリワーク施設「mentalfit」でも、所属していた会社への「復職」ではなく、転職するという道を選ばれる方は少なくありません。

 

10年以上務めた会社に戻らずに、未経験職に転職したAさん

製造会社の総合職としてキャリアを重ねて来ており、人事や所属長からの評価も高かった。

本人の性格的にも仕事はきちんとやるという考え方が強くあるためか、他の職員や後輩が〆切に間に合わなかったり、愚痴を言ったりしているのが気になっていたが口に出したりすることはなく耐えられていた。

 

そんな状態であるため、業務は自身に回ってくることが増え、自分も手一杯だが断ることができず引き受けていた。

忙しい状況が落ち着いた頃、朝の体調が悪く仕事を休むことにしたら、そこから会社に対しての拒否感が強くなり、電車に乗ることさえ難しくなってきた。

 

リワーク中は復職する方向で活動していたが、どうしても職場に行くということが難しく、同時に「このままの状態で働いても、仕事どころではないのでは?」と不安も強くなっていた。

頭の中は常に「復職しないと」といった考えが巡り、休まらない日々が続きながらも休職期間満了までの決断は迫られていた。

 

職場側は、部署や支店異動などできる限りの配慮を提案してくれていたが、本人の「迷惑をかけることになる」といった決断により、退職することになった。

その後は、以前から少し興味が医療関係の仕事を見つけて、自分のペースを維持しながら働いています。

 

転職を選択する理由

最近では、転職活動も活発になっており、復職を目指しながらも転職エージェントなどに登録して複数の選択肢を持ちながらリワークに臨まれている方が増えてきました。

SNSなどでもうつなどのメンタルヘルス不調で休職していることを発信されている方も多く、休職中の方がどの様に過ごしているのかが透明化されてきているようでもあります。

そのため、復職ではなく転職することや同じ会社で働き続けるのではなく、自分に合った会社を見つけて働くという流れも関係しているように思います。

 

休職期間中に転職を検討する主な理由として考えられるものを考察してみました。

1.環境要因の見直し

休職の原因となったストレス要因が職場環境にある場合、同じ環境への復職は再発リスクを高める可能性があります。

 

厚労省が出している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、“職場復帰は元の慣れた職場へ復帰させることが原則です。

ただし、異動等を誘因として発症したケース等においては、配置転換や異動をした方が良い場合もあるので、留意すべきです。”とされています。手引きにもあるように、元の職場に復帰することが基本ですが、休職者の状況によって考慮されることが多くあります。

また、筆者の体感としては部署異動を検討することが多くあるようです。

 

上司との人間関係、過重労働、職場の雰囲気など、改善が困難な要因がある場合は、新しい環境での再スタートが適切な選択となることがあります。

2.キャリア観の変化

休職期間やリワーク期間中は自分自身と向き合う貴重な時間でもあります。

この期間に価値観やキャリア観が変化し、「本当にやりたい仕事」「自分に合った働き方」を見つめ直す方も多くいらっしゃいます。

 

また、リワークでは「なぜ休職をしたのか?」や「自分のストレス対策」等を取りくむことが主な内容です。

その様なワークを実施していると、異なる業界や職種への転職が自分には良いと感じらえることや「どうせ頑張るなら、やってみたいことをしてみよう」と転職を希望されるケースも増えています。

3.ワークライフバランスの重視

メンタルヘルス不調を経験することで、仕事と私生活のバランスの重要性を再認識される方も多いです。

残業時間の多さや休暇の取りづらさなど、以前は受け入れていた労働条件を見直し、より働きやすい環境を求めて転職を選択される場合もあります。

 

休職される方の多くが、常に頭が仕事のことや過去の失敗、誰かに言われた言葉、怒るかもしれない不安でいっぱいです。

単純に仕事量が多くて時間が圧迫されている方もいますが、頭の中が忙しくて休まらないということで困っています。

休職をしているとストレス要因となる状況から距離を置きやすくなります。

 

以前は、仕事中心の生活だったのが、休職してからプライベートの比重が多くなります。

その様な中で、自分に適した仕事とプライベートで使いたい時間のバランスが見つかる人もいます。

その結果、仕事の比重を減らそうと行動に移されることがあります。

退職という選択肢

転職だけでなく、一度働くことから離れて療養に専念したり、フルタイムや正社員だけでなくアルバイトなどの働き方を選択したりする方もいらっしゃいます。

特に、従来の雇用形態での働き方が自分に合わないと判断された場合、新しい働き方を模索される方が増加傾向にあります。

無理をして復職を急ぐよりも、十分な回復期間を確保することが、長期的な視点では最良の選択となることも少なくありません。

あなたに合った答えを見つけるために

「復職しなければ」という思い込みに縛られる必要はありません。

大切なのは、あなた自身にとって最適な選択を見つけることです。

1人で抱え込みすぎて、休職中のお悩み、復職への不安、転職への迷い、将来への漠然とした心配がどんどん膨らんできます。

 

人に話せなくなった時は、孤独を感じやすいです。

 

どんな小さなことでも構いません。一人で抱え込まず、専門家に相談してみませんか?

Mentalfitでは経験豊富な専門スタッフが、あなたの状況に合わせて

 

・復職に向けた具体的なステップ

・転職活動のサポートと情報提供

・新しい働き方の可能性

・メンタルヘルスケアのアドバイス

 

を一緒に考えさせていただきます。

 

あなたの人生の選択肢は、思っている以上に豊かです。

 

まずは気軽にお話を聞かせてください。

 

きっと、あなたらしい道が見つかるはずです。