心理職でも「うつ」になる!? 予防と休職後の対応について
もうすぐ、今年も終わりという時期にこの様な記事を発見しました。
「千葉県児童相談所の職員、精神疾患で長期療養は平均より3倍越え、心理職、児童福祉司に限れば、4倍近い」
https://news.yahoo.co.jp/articles/3bd60c13d5aaf0394a49775795965d9933679646
最前線で活躍されている専門職の方が、精神疾患で休職されることは珍しいことではないですが、「平均よりも高い」結果が出ているということが業務や職場の大変さが伝わってきます。
専門職だからと言って、対処法ができているということではないです。
なぜ、専門職でも精神疾患に至ってしまうのか?
National Institute for Occupational Safety and Health (米国立労働安全衛生研究所)のストレスモデルが仕事のストレスについて考える時に参考にできます。
図 NIOSHのストレスモデル(一部改変)
上記は、仕事におけるストレスモデルで、ストレス要因が疾病につながる過程を表しています。
仕事上のストレス要因(仕事量が多い、精神的に負担な仕事、自分のスキルを活かせない等)が直接、ストレス反応(イライラ、だるさ、疲労感等)につながるのではなく、個人要因、仕事外の要因、緩衝要因も作用して、ストレス反応になっています。
それぞれの要因の内容は、以下の通りです
- 個人要因(性格、考え方、生活様式など)
- 仕事外の要因(家族、友人関係、家庭環境、ライフイベントなど)
- 緩衝要因(上司、同僚からのサポートなど)
上記の3要因は、ストレス反応を増加させることもあれば、低下させることもあります。私たちは家族との時間や仕事をしていく生活の中では、主任や親、専門家など様々な役割を担っています。仕事だけがストレスになることもあれば、仕事外の要因が強く、ストレス反応を引き起こしている場合もあります。
ここからは完全な個人的な見解になりますが、
職場が人手不足(仕事の要因)で、お互いにサポートできない状況(緩衝要因がない)であったことが推測できます。さらに、心理職または児童福祉司であれば、周囲からの専門職としての期待や業務範囲も多いことでしょう。
児童相談所の職員のアンケート結果からも分かるのではないでしょうか?
https://www.soumu.go.jp/main_content/000093404.pdf
また、スウェーデンの心理学者カラセックが提唱した「職場ストレスモデル」によると、「仕事の要求度」と「仕事の裁量度」の関係により健康度に影響を及ぼすというものです。
このモデルで重要なポイントは「仕事の裁量度」です。
「仕事の要求度」が高く「仕事の裁量度」が低い業務内容であれば、ストレスと感じやすくなります。
反対に「仕事の要求度」が高く「仕事の裁量度」も高い業務内容であれば、やる気が起きやすくなります。
この「裁量度」が高い業務内容であれば、「やる気」を維持して仕事を続けることができますが、「裁量度」が低くなるとやる気が減退し、ストレスと感じやすくなります。
つまり、やる気が出るのか、やる気が出ずにストレスと感じてしまうのかは、どれだけ仕事を自分でコントロールしていると思えているかによります。
その中で、「人手不足」と感じている状態で働いている方々は、「やる気になる」のではなく、「ストレス」と感じていることがうかがえます。
それでも、休職してしまったら?
病気の治療
まずは、症状を抑えることを行います。働いている人であれば、休職、状況によっては退職するといった休養を行います。また、休養と同時に服薬治療も開始します。
休養し、ストレス要因から距離をとり、悪くならないように環境を整える必要があります。
ここでは、病院やクリニックで通院治療していく段階となります。
仕事の要因が強ければ、休養といった方法で、ある程度は回復してきます。ただ、元の職場に戻るとなると、再発の可能性は非常に高いでしょう。
元の職場に戻るとすれば、病気の治療だけでは難しくなってきます。
職場に戻るためには、復職支援を受けることが望ましいです。
復職支援
復職支援は、実施されている施設が限られています。
よく知られているのは、各都道府県に設置されている「障害者職業センター」で、無料で復職支援(リワーク)を受けることができます。ただ、公務員の方は受けることができません。
そのため、病院やクリニックに併設されているデイケアで復職支援(リワーク)プログラムを受けるか、民間で実施されている復職支援(リワーク)を受けるかになります。
ご自身だけで、元の職場に戻ることはかなり労力がいることで、あまりおススメはできない方法になります。
もし、復職を考えている方がいれば、復職支援も視野に入れてみてはいかがでしょうか?
大事なことは・・
自分で再発予防を行うこと、そして、ストレス要因を減らすことが必要になります。
職場や家庭環境はなかなか変わりにくいものですが、緩衝要因(上司、同僚のサポートなど)を増やすことができれば、現状よりも改善されていくことはあります。
自分や環境を変えていく働きの2つを同時に行うことをサポートする場所が復職支援の施設でもあります。
ご自身ができる裁量度を広げていくことが、ストレスを緩和させていく1つの道になります。