コラム

「もう仕事辞めたい・・・」「思っていたのと違う・・・」は、なぜ起こるのか?

新年度になり、みなさんは生活の変化があったでしょうか?4月が近づくと新しいことを始めたくなるのが春の季節の特徴ですね。そして、高揚感を感じつつ、気持ちをリセットして新しい環境に臨んでいる人には、注意が必要な大事な時期でもあるといえます。

 

今、「仕事向いていないかも」、「もっと頑張らないと」、「仕事に行きたくない」と感じておられる方、過去に感じていた方に向けての内容になります。

 

新しい環境になってから、しばらくすると「あれ、思ってたのと違う・・・」、「前の職場(学校、部署など)が良かったかも」と思ってしまい、センチメンタルになることは、人生のなかで1度や2度体験したことがあるのではないでしょうか?

 

このようなどこか何とも言えない気持ちが持続すると心身の健康上によくありません。これらの現象は60年以上も前から米国の組織心理学者、E・C・ヒューズによって、「リアリティー・ショック」という概念として提唱されています。

 

リアリティショックとは

リアリティショックとは、E・C・ヒューズによると「組織に実際に所属する前の自分の期待と現実に経験したこととのギャップから受けるショック」とされています。現実に経験することには仕事の内容だけでなく、職場の人間関係も含まれています。

 

 

リアリティショックが起きると、喪失感や将来への不安を感じるようになり、受ける衝撃の大きさによってはやる気を全く失い、うつ状態または適応障がいへとつながることもあります。

 

企業においては新たに職に就いた人材が、事前に思い描いていた仕事や職場環境のイメージと、実際に現場で経験したこととの違いをうまく消化しきれず、最悪の場合は離職にまでいたる問題があります。これは新入社員だけでなく、中途採用者、他部署へ異動となったベテランでも大きな環境変化に直面すると、リアリティー・ショックに陥ることがあるといわれています。

 

リアリティショックの実態

 

株式会社 毎日コミュニケーションズが2008年に春に入社して1ヵ月経った新入社員313名を対象に「リアリティー・ショックに関するアンケート」調査を実施しています。その結果によると、入社1ヵ月でリアリティー・ショックを感じた新入社員は、「とても感じた」(16.6%)と「少し感じた」(46.3%)をあわせると、全体の6割以上に達しています。

リアリティー・ショックを感じたことで心理的にどんな影響があったかについては、以下に記した順の結果であった。

  1. 「焦りを感じる」(36.0%)
  2. 「会社に行きたくないと思うことがある」(35.5%)
  3. 「将来が不安で仕方ない」(29.9%)
  4. 「仕事をやめたいと思うことがある」(27.9%)

 

いかに、リアリティー・ショックが仕事に対してネガティブなイメージを抱いているかがわかります。

また、どんなことにリアリティーショックを感じたかについては、「社会人としての自分の能力」、「社内の人間関係」(42.1%)がともに高い結果となっており、特に「同性の先輩」「上司」との関係性の順で悩んでいることが分かります。

引用・参考URLはこちら ⇒ http://cobs.jp

 

さらに、社会人を加えた調査をみてみると、パーソル総合研究所とCAMPは、全国の18歳以上30歳未満の学生・社会人1,700人を対象に2019年5月に「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」を実施。”「働くことを楽しみたいと思っている学生」は79.3%で、「働くことを楽しめている社会人(入社1~3年目)は 35.3%で、学生と社会人で44.0ポイントのギャップが存在していることがわかります。”

 

そして、入社後に感じる何らかの「リアリティ・ショック」を抱える社会人は76.6%と、約7割の新社会人が入社前と後のイメージに乖離を感じながらも働いている実態があります。リアリティショックが高い人と低い人では、会社満足度が、入社直後は25ポイントの開き、入社1年後には66ポイントも差が出ており、仕事に対するモチベーションの違いから仕事へのパフォーマンスの差に影響が出てくることにもつながっているかもしれません。

 

具体的なリアリティショックは、「給料・報酬の高さ」(37.4%)、「昇進・昇格のスピード」(31.9%)、「仕事で与えられる裁量の程度」(31.5%)など、仕事に関係する項目が上位を占めています。

引用・参考URLはこちら ⇒ https://news.mynavi.jp/article/20190522-828208/

 

リアリティショックの分類

多くのリアリティショックの研究によると、リアリティショックの定義として「要因」と「現象・症状」から構成されていることが分かり、会社や組織等は、業務内容、先輩、上司等の環境をメインとした「要因」のみに焦点を当てて調査を行われていることが多いようです。そのため、会社としての対策、対応が重視されています。

 

一方で、「焦り」や「不安感」といった個人に生じる症状などは、組織単位ではなく、個人への対応・支援として実施することが必要になってきます。

 

リアリティショックの研究の対象になっている対象者は、主に就活中の学生、新入職員、看護師、専門職学生が多く、課題となっていることが推測されます。

 

求められる理想の職場とは

 

2021年にリクルートが実施した「2021 年 新入社員意識調査」調査によると、「仕事についていけるか(65.7%)」「私生活とのバランスがとれるか(36.7%)」が過去10年間との比較で増加した一方で、「先輩・同僚とうまくやっていけるか(38.6%)」は昨年よりも減少し、例年と同じ水準になっています。

 

また、どのような特徴を持つ職場で働きたいは、「お互いに助けあう(68.4%)」「お互いに個性を尊重する(44.9%)」といった特徴を持つ職場で働きたいと感じているようで、協調性や多様性を受け入れる、または受け入れてもらいたいという気持ちがあるのかもしれません。

引用・参考URLはこちらhttps://www.recruit-ms.co.jp/upd/newsrelease/2106271634_6187.pdf

 

 

リアリティショックへの対策

リアリティショックとは、ギャップから生じるショックということです。類似した心理的な現象としては、「欲求不満」、「期待はずれ」等が思い浮かびます。これらは、どれも創造と現実、実施前と実施後等の予想と反している結果から生じます。不安や寂しさ、怒りなどの感情もこうした認識のずれから発生していきます。最初は、何となく、気にせずに考えられていたことが徐々に気になりはじめ、辛さ、悲しみ、怒りなど負の感情が沸きあがってきてしまいます。

その様な認識のずれを解消するための行動ととしては、「自身の期待を確かめに行くこと」です。

具体例としては、以下のような行動が考えられます。

  • 先輩Aに困った時に「どうした?」と声をかけてもらえると思っています、と伝える
  • 入社前に仕事で大変だと感じる部分、その時にどうやって乗り越えたのか等を先に聞いておく
  • 働きたいと思っている会社を実際に見学させてもらう

 

上記のような内容を参考にして、ご自身でできる行動を試してみましょう。

 

自分だけでは、どうしようもない、仕事に行くのが億劫、仕事のことを考えて眠れない、など仕事のことで悩んでいれば、早めに専門機関にご相談する等行動を起こしてみてください。

 

しかし、中には行動に移せず1人で抱え込んでしまう方もおられると思います。

 

その様な時は、家族や友人などに相談する、もし、職場に相談室のような話を聴いてくれる場所や人がいれば利用することから始めてみましょう。