コラム

パワハラで休職。職場復帰が怖い。会社の窓口も決められていない。休職中に一人でできる3つの準備

あの上司の声が、ふとした瞬間に蘇る。職場を思い浮かべるだけで動悸がする。それなのに会社からは「万全になったら戻ってきて」の一言だけ。

何が万全なのか、誰も教えてくれない。

こういった悩みを、8年間で延べ500名の方から直接聞いてきました。

休職者のリワーク支援を続けてきた現場で、一つ確かなことがあります。何もしない休職と、準備する休職では、復職後の安定が大きく変わるということです。

特に、産業医も人事部も相談窓口もない環境での休職は、大企業とはまた別のしんどさがあります。今日はそういう方に向けて、家でできる3つの準備をお伝えします。

そもそも、怖い気持ちはなぜおこるの?

パワハラを受けた後に「職場が怖い」と感じるのは、心理的な防衛反応と考えられています。繰り返し脅威にさらされた脳と体が、「また同じことが起きるかもしれない」と警戒し続けている状態です。

意志の力だけでどうにかなるものではなく、適切なリハビリと時間が必要となる場合が多いです。

復職への恐怖を「甘え」と自分を責める方が多いですが、8年間500名以上の相談を通じて感じるのは、そう感じる方ほど、実は真面目で責任感が強いということです。

戻ったら「なんとかなる」の?

結論からいうと、なることもあるし、ならないこともあります。

リワークでよく見るのは、「戻ってしまえば慣れるかも」と思って復職したものの、数週間でまた体調を崩してしまうパターンです。

特に、職場環境そのものが変わっていない場合(同じ上司がいて、同じ文化が残っていて)準備なしで戻ることは、完治していない骨折で走り出すようなものです。

一方で、事前にある程度の準備をした方は、同じ環境に戻っても「以前とは違う自分」で立ち向かえることが多い。

職場は変わらなくても、自分の受け取り方や対処の仕方が変わるだけで、ずいぶん違います。

休職中にできる3つの準備

① 「元気の基準」を、自分で決める

「万全になったら」という言葉の厄介なところは、基準が相手の主観だという点です。

あなたがいくら回復しても、会社側が「まだ万全じゃない」と判断すれば話は前に進まない。逆に、まだしんどいのに「もう万全ですよね?」と押し切られる可能性もある。

だから、自分自身の回復の基準を、先に自分で決めてしまいましょう。主治医がいる方は、一緒に考えてもらうのが理想的です。

たとえば、こんなふうにノートに書いてみてください。

・朝7時に目が覚め、30分以内に起き上がれる
・午前中、2時間ほどPCの前に座っていられる
・週に3日以上、外に出て15分歩ける

大事なのは、自分自身が観察できる、具体的な行動の基準であること。

「元気か元気じゃないか」という曖昧な感覚ではなく、「〇〇ができたかどうか」という事実で自分の状態を把握できると、会社の曖昧な言葉に振り回されにくくなります。

② 「これはあの人の感情論」——境界線をノートに引く

パワハラ的な言葉を長く浴びていると、

「自分が悪いから怒られた」
「自分の能力が低いから、あんな言い方をされた」
と思い込むくせがついてしまうことがあります。

これは性格の問題ではなく、繰り返し浴びせられた言葉が積み重なった結果です。

これを少しずつほぐすために、次の練習が効果があるかもしれません。

過去に言われた言葉、あるいは今後言われそうなことをノートに書き出して、「これは業務上の指示か?」「それとも感情のはけ口か?」と二つに分けてみるだけです。

たとえば「この書類の締め切りは明日です」は業務上の指示「なんでこんなこともできないんだ」は感情論。後者は正当な評価でも、事実の指摘でもありません。

実際に相談に来た方の中に、このメモを続けるうちに「あの言葉は私のせいじゃなかった」と気づき、涙が出たとおっしゃった方がいました。

③ 会社との連絡は「テキスト」に絞る

電話が怖い、という方はとても多いです。声のトーンや圧力が直接伝わってくる電話は、心身への負荷が大きい。特に苦手な相手との通話は、それだけで一日消耗してしまうこともあります。

会社とのやり取りは、できる限りメールやLINEなどテキストに絞ることを今から習慣にしてください。

理由は二つあります。一つは、返信を考える時間が生まれるので、感情的なやり取りに巻き込まれにくくなること。

もう一つは、「いつ、何を言われたか」の記録が自動的に残ること。延べ500名の相談の中でも、この記録が後々の復職交渉で本人を守った場面を何度も見てきました。

「電話してほしい」と言われたら、「体調管理のため、文書でのご連絡をお願いしています」と一言添えれば、多くの場合は受け入れてもらえます。

一人でぶっつけ本番にしなくていい

ここまで読んで、「やってみようかな」と思ってもらえたなら嬉しいです。でも同時に、こう感じた方もいるかもしれません。

「家で練習できたとして、実際にあの職場に戻ったとき、ちゃんとできるかな……」

その不安は、とても正直な感覚だと思います。

家で一人で準備することと、実際にあの環境で実践することの間には、大きな差があります。支えてくれる人がいない状態でぶっつけ本番で復職するのは、心理的にも体力的にもハードルが高い。

だから、もし「一人でやるのが怖い」と感じたら、復職前に安全な環境でリハビリできる場所を頼る選択肢も知っておいてください。それが「リワーク」という制度です。

リワークは、実際に職場に戻る前に、グループの中で少しずつ「働く練習」ができる場所です。先ほど紹介した境界線の引き方や感情の整理も、一人でノートに向かうより、専門家や同じ経験を持つ仲間と一緒に取り組んだほうが、ずっと安全に進められます。
>リワークってどんなことをしているの?

まとめ~復職にするために

「体調が万全になったら戻ってきて」という言葉は、会社の都合で語られたものかもしれません。でも、復職のペースを決めるのは、最終的には自分自身です。

誰かに言われたタイミングで戻るのではなく、自分の基準をクリアしたときに、自分の言葉で「戻る準備ができました」と言える。そのための準備を、今日から少しずつ積み上げていいんです。

一人じゃない。同じように悩んでいる人は、あなたの周りにも必ずいます。

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