なぜ慎重に戻ったのに、また倒れてしまうのか。2回目の休職者が知るべき「再発の正体」
2回目の休職で気づいたこと——「大丈夫」が信じられなくなったとき、本当に必要なもの
なぜ「慎重に戻ったはず」なのに、また倒れてしまうのか
前回は、あれだけ気をつけた。主治医のOKをもらって、段階的に業務を増やして、残業も断った。「今度こそ大丈夫」と思って戻ったのに。また、休むことになった。
布団の中で、職場のことが頭をよぎる。上司の顔、積み上がった案件、自分の席。考えただけで、胸が重くなる。そのくせ「早く戻らなければ」という焦りだけは、止まらない。
「前回あんなに慎重にしたのに、なぜまた繰り返してしまったのか」
この問いを抱えたまま、答えが見つからずにいる方が、実はとても多くいます。リワークで、この8年間で延べ500名近くの方と向き合ってきた中で、2回目の休職を経験した方の多くが、口を揃えてこう言います。
「もう、自分の『大丈夫』が信じられない」と。
今日はその「なぜ」に正直に向き合いながら、自宅でできる具体的な準備を、一つひとつお伝えしていきます。
体調が戻ることと、働き方が変わることは、まったく別のこと

精神科臨床の現場で長く指摘されてきたことがあります。うつ病からの回復プロセスで、私たちが「治った」と感じる基準は、あくまで「症状が消えた」という点です。
しかし再発を防ぐために必要なのは、症状を消すことではなく、症状を引き起こした環境や行動パターンそのものを変えること。
これは言葉にすると単純に聞こえるかもしれません。しかし実際には非常に難しい。
なぜなら、行動パターンの多くは「本人が美徳だと信じているもの」と深く絡み合っているからです。
ある40代リーダーの場合

以前、リワークにこんな方がいました。製造業の中間管理職で、初回の休職から復帰した後、チームへの配慮から以前より仕事量を増やした。「迷惑をかけた分、取り返さなければ」という思いからでした。
最初の3ヶ月は順調でした。数値的にも周囲の評価も戻ってきた。しかしその後、後輩から「この案件、相談があるんですが」と声をかけられるたびに断れなくなっていた。「自分が今断ったら、また迷惑をかける」という回路が、休職前よりも強く作動していたのです。
主治医の診察では「調子は良さそうですね」と言われ続けていました。確かに、診察室での会話は問題なかった。問題は、職場という「本番」の中でだけ発動する、無意識のパターンだった。
その方が再び限界を超えたのは、復職から8ヶ月後のことでした。
なぜ、同じパターンを繰り返してしまうのか
「復職後しばらくして、こんな症状が戻ってきた」という声をよく聞きます。
・ 朝、起き上がれなくなる。
・ 食欲がなくなる。
・ 夜中に目が覚めて、仕事のことが頭を離れない。
「またあの感覚だ」と気づいたとき、すでに限界を超えていた、と。
リワークの観点から言えば、これは「再発」というより「同じ引き金が引かれた」と表現するほうが近いかもしれません。
うつ状態になるまでの過程
・ 抱えすぎる
・ 断れない
・ 誰にも言えない
を一度経験した体は、復職後に同じ状況が重なってきたとき、前回より早く同じ症状で反応するようになります。
眠れない、食べられない、体が動かない。これが「再発」の正体です。
つまり、2回目の再発は「意志の弱さ」ではありません。前回と同じ働き方に戻ってしまったことへの、体の正直な反応なのです。変えなければならないのは、「頑張る量」ではなく、「頑張り方そのもの」。
では、「頑張り方を変える」とは何をすることか。
それは人によって少しずつ違います。ただ共通しているのは、これまで「当たり前」としてやってきた働き方の癖に、自分で気づけるようになること。そのための練習を、次からお伝えします。
今日から自宅でできる、3つの「自分を守る練習」
ここからは、今すぐノートを開いて取り組める具体的なワークを紹介します。これらは再発防止の支援でも活用されている手法をベースにしています。まずは一人で、丁寧にやってみてください。
練習① 「自分だけのSOSの目安」を数字で書き出す
自分の感覚は信頼できない。2回目の休職を経験した人が最初に受け入れるべき事実は、これです。「まだ大丈夫」という感覚が誤作動するなら、感覚以外の基準で動くしかありません。
- 睡眠が6時間を切ったら、翌日の仕事量を半分にする
- 朝食を3日続けて食べられなかったら、誰かに状態を伝える
- 週の残業が10時間を超えたら、翌週に上司へ相談する
- 気持ちの落ち込みが3日以上続いたら、主治医に連絡する
数字は人によって違っていい。大切なのは「自分で決めること」と「感覚ではなく、決めた数字で動くこと」です。決めた目安は、主治医や家族など信頼できる人にも伝えておきましょう。「お守り」ではなく、「実際に使うルール」として扱うことが重要です。
さらに、その目安を超えたときに「誰に、どんな言葉で伝えるか」まで決めておくと、いざというときに動きやすくなります。連絡先とひと言のメッセージ文をスマートフォンに保存しておくだけでも、ずいぶん楽になるものです。
練習② 「自分がしんどくなるときのパターン」を書き出す
前回しんどくなった経緯を「なんとなく覚えている」だけでは不十分です。どの場面で、どんな言葉で、どんな頼まれ方をしたときに「断れなかったか」を、記録として把握することが必要なのです。
- 仕事が増えた瞬間:いつ、誰から、どんな依頼だったか
- 断れなかった理由:「立場上」「この人には世話になっているから」「自分しかできないから」——どの言葉で自分が動いてしまったか
- 体のサインが出ていたタイミング:倒れる何週間前から、どんな変化が体や気分に出ていたか
書き出すと、多くの方が「自分にはパターンがある」と気づきます。上司から頼まれると断れない、締め切り前は完璧主義が強くなる、疲れていても「大丈夫です」と言ってしまうなど。パターンが見えてくると、次に取るべき対策も具体的になってきます。
書き出した内容は、主治医やカウンセラーに見せてみてください。一人で抱え込まずに共有することで、支援の精度も上がります。
練習③ 日常の中で、「頼る」を少しずつ試してみる
復職後に再発を防ぐうえで、周囲に早めに状態を伝えられるかどうかは、大きな分岐点になります。しかしこれは、頭でわかっていても、いざ職場でとなると難しい。なぜなら「頼る」こと自体、慣れていないと体が動かないからです。だからこそ、まず職場ではなく日常の安全な場面で、小さく試しておく必要があります。
- たとえば、「実は最近ちょっと疲れていて」と、誰かにそのまま伝えてみる
- たとえば、何かを一人で抱えているとき、「ちょっと聞いてもらえますか」と声をかけてみる
- たとえば、助けを借りられそうな場面で、いつもより少しだけ早く「手伝ってもらえますか」と言ってみる
仕事と関係なさそうと思うかもしれません。実際にそういわれる方は多いです。大切なのは「誰かに伝える」という経験を、安全な場所で少しずつ積んでいくことです。日常の小さなひと言が、やがて職場での「早めの相談」に変わっていく。そういうものです。
それでも、「職場の本番」では一人では限界が来る

ここまで読んで、「よし、やってみよう」と思っていただけたなら嬉しいです。これらの練習は、再発防止に科学的な根拠のある方法をもとにしています。
ただ、一つだけ正直に問いかけさせてください。
これを、上司や部下の目の前で、本当に一人でできるでしょうか。
人には長年の経験により、体に染み込んだ行動のパターンがあります。
「自分が引き受けなければ」
「弱みを見せてはいけない」
「完璧に仕上げてから動く」
これらは、頭でわかっていても、職場のプレッシャーの中では自動的にスイッチが入ってしまう。
脳科学的に言えば、強いストレスの下では前頭前野(理性的な判断を担う部位)の働きが低下し、扁桃体(恐怖や反射的な反応を担う部位)が優位になります。「わかっているのにできない」は、意志の問題ではない。ストレス下の脳に起きている、生理的な反応なのです。
つまり、知識として持つことと、本番の場面で実行できることの間には、大きな溝があるということです。
「ぶっつけ本番」を避けるために
再発予防の専門的な支援では、この溝を埋めるために「実際の職場に近い、安全な練習の場」が重視されます。「あ、今また抱え込もうとしているな」と自分に気づき、ブレーキを踏む練習を重ねること。それが、職場本番に備える最も現実的な方法です。
この練習の場として活用されているのが、リワーク(復職支援)プログラムです。主治医との連携のもと、グループワークや模擬的な業務を通じて、実際の職場に近い状況で「自分のパターンに気づく力」を少しずつ育てていきます。
[→ 再休職を防ぐためのリワークの選び方]
今回の復職は、前回とは違う
2回休職したという事実は、あなたが弱いからでも、向いていないからでもありません。
それはただ、「ずっと一人で頑張りすぎてきた」という、長年の証拠だ。
今回は違います。体調を回復させるだけでなく、「倒れない働き方」という新しいやり方を、一つひとつ手に入れて戻ればいい。
前回は「元の自分に戻る」復職でした。今回は「新しいやり方を身につけた自分で戻る」復職にする。その違いが、これからの未来を変えていくかもしれません。
[→再発防止:mentalfitのプログラム]
リワークについて詳しく知りたい方は⇒【問い合わせ】
少し相談してみたい方は⇒【無料相談】
【各店舗情報】
岸和田店について詳しく見る
尼崎店について詳しく見る
新大阪店について詳しく見る
※本記事は、一般的な情報提供を目的として作成されています。個別の症状や治療方針については、必ず担当医・主治医にご相談ください。